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2015.09.10

京の手わざ文化入門 藤澤典史さん、米原有二さん、山崎伸吾さん

このコーナーでは各分野で活躍するいろいろスクールの講師の方々に、実際のお仕事の話や講座のポイントなどをお伺いしていきます。

今回お話を伺うのは「京の手わざ文化入門」第2回の講師をつとめる箔押師の藤澤典史さんと、第1回のレクチャー及び第2〜5回で聞き手をつとめる文筆家・工芸ジャーナリストの米原有二さん、コーディネーターの山崎伸吾さんです。

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こんにちは、宜しくお願いします。

藤澤・米原・山崎:宜しくお願いします。

まず職人である藤澤さんの普段のお仕事について教えて下さい。

藤澤:箔押師(はくおしし)をしています。京都では金箔を貼ることを「押す」といいます。京都では箔押師と呼びますが、これが名古屋では金箔を「置く」、金沢に行くと「貼る」と言ったりと呼び方が変化します。
僕は金箔をお寺の仏具や神社などに貼るのが専門で、最も金の純度が高い「純金箔」を使うのが特徴です。同じ金箔を扱う職人の中でも、襖絵などの日本画、螺鈿、西陣織、扇子などそれぞれ専門に分かれているんですよ。

米原:金箔は純度の違いによってものすごくたくさんの種類があって、銀や銅など他の金属を混ぜ、用途によって輝きなどを変えているんですね。
藤沢さんがされているような、お寺にある大きな仏壇などは、木工、漆、箔押し、彩色…といったそれぞれの工程が専門家による分業で作られています。

藤澤:他の地方では塗師が漆を塗り、金箔も押して、と一貫して作業される場合もあるようですが、京都は完全に分業ですね。 ですから僕も製造の一工程としてひたすら金箔を押しています。
天井などの平面もありますし、欄間彫刻のような複雑な立体物でも継ぎ目のないように金箔を押す技術が特徴です。

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お仕事のオフシーズンなどもあるのですか?

藤澤:いえ、京都には部分的な修繕なども含め日本全国から仕事の依頼が集中しますので、年中忙しくしています。 これが仏具に使用している金箔です、良かったら持ち上げてみてください。

おおこれは本当に薄いですね。緊張します。

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米原:黙っていても鼻息で飛んでいってしまうくらい薄い。10,000分の1ミリだそうです。
ほら、粒子が細かくて指の腹でこすっているうちに消えてしまいます。いろいろスクールのワークショップでもこれを使用します。

藤澤:ほんの、ちょっとした風でも舞い散るので、真夏でも扇風機やエアコンも使えないんです。漆を接着剤にして金箔を押すのですが、その接着剤代わりとなる漆がどの程度乾燥したときに押すかによって金箔の輝き方が変化するんです。

米原:京都では「重押し」と言って、重厚な鈍い光り方が良しとされていますね。
これがほかの地域のお寺に行くとピカピカと光り輝いていて、同じ金箔を使用していても全く印象が違っています。

藤澤:ちなみに僕ら仏具の職人は接着剤に漆を使いますが、屏風の職人さんは膠(にかわ)を使ったりと、同じ箔押しでも業種によって特徴があるんです。

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本当に細かく分かれているんですね。金箔だからみんな同じだと思っていました。

藤澤:そう、分業なので自分の仕事が手元に残らないのが少し寂しいところでもあります。でもお寺など、完成した仕事はよく見に出かけていますよ。職人さんの腕によって仕上がりの綺麗さが全く違うので、見比べるのも勉強になります。

藤澤さんの最近のお仕事をご紹介していただけますか?

藤澤:具体的な名称は申し上げられないのですが…みなさんがご存知の大きなお寺など重要文化財や国宝などの仕事をさせてもらっています。

凄い。講座の中ではここだけの話が伺えるかもしれませんね。箔押師になられたきっかけは何ですか?

藤澤:親父が彫物をしていたりして育った影響もあって元々ものづくりに興味があったんですが、僕が20代の頃に京都伝統大学校という学校が出来まして、そこに入学して職人を目指しました。
それまで職人になると言えば、15歳から丁稚に入るという徒弟制度だったのですが、その学校が出来てから変化したように思います。

米原:今は美大を出て職人になる方も多いですね。

藤澤:昔は休みも無いような職業でしたが、だんだん変わってきています。
以前は本当に男の世界でしたが、いまでは女性の職人さんも増えています。

世襲制のようなイメージがありましたが、学校で学んでから入門される方が多いんですね。藤澤さんが職人で良かったなと思うのはどんな時ですか?

藤澤:はい。小さい頃からお祭りが大好きなので、全国の大きな神輿や祇園祭の鉾などに携われる時は誇らしくて、仕事をしながら思わず笑みがこぼれてしまうくらい。本当にやってて良かったと思います。

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お祭りと聞くと親近感が湧きます。このお仕事初めてどれくらいになられますか?

藤澤:20年くらいです。僕は40歳ですが、この世界ではまだペーペーです。
定年の無い世界なので、50歳になっても青年会の若手扱いです、笑。
多くの大先輩たちが活躍されています。

ところで、今回「京の手わざ文化入門」をコーディネートしてくださった「京都職人工房」とはどんな活動をされているんでしょうか?

山崎: 京都府が行っている若手の職人さんをサポートする取組みです。仕事を終えてから通える社会人向けの学校のようなものですね。
商品開発や、ビジネスプランの立て方、確定申告の仕方など、伝統産業の世界で個人事業主としてやっていくための技術を身につけていただくことを目的としています。
職人さんは、その道一筋でものづくりはとても得意な反面、売ることは苦手な場合が多い。
これまでは売り場の人や問屋さんが「売る」部分を担っていましたが、このところの不景気で、職人さんたち自ら売ることに関わる必要が出てきたんです。
そこで、京都職人工房ではライターやデザイナー、商品開発プロデューサーなどを講師に招いて、自分の技術を人に説明するための言葉選びや文章の書き方、パンフレットやホームページといったPRツールの作り方など学んでいただたり、商品開発ですと、先にものを作ってしまって、後から「これ売れへんやろか?」となるのではなく、先にマーケティングをしてどんなものを作るか考えましょう、ということをお伝えしたえりしています。
今年4年目に入り現在は38名、伝統産業の人に限らず、デザイナーやアーティストも参加しています。最近はここから新たなプロダクトが生まれるなど面白い動きが出てきています。

職人さん達の高度な技術からどんな面白いものができるのか楽しみです! それでは今回の講座のポイントはどんなところでしょうか?

米原:今回のいろいろスクールでは30代〜40代の4人の若手職人が登場しますが、普段は表舞台に出ない、縁の下の力持ちのような、本当にディープな伝統産業の世界の職人たちですので、そういう人たちと出会える貴重な機会となると思います。
私からも歴史的な話も含め、写真や映像を使って分かりやすくご説明し、全5回を通して京都の工芸の世界を見渡せるような構成となっています。

第2回〜第5回は、箔押師、鏡師、京友禅型染職人、漆作家と毎回異なる職人さんを招いたワークショップ形式で、職人さんが普段実際に使っている道具や材料を使って、技術の一端を体験できるようになっています。
例えば第5回のワークショップでは漆の酒器でお酒の飲み比べをしますが、漆は何回塗るかで、風合いや耐久性、使い勝手、口当たりなどが変わってきます。薄い酒器だと手の温もりがお酒に伝わって、それで香りが立ってくる、といったことも体験できると思います。私は聞き手として、職人さんの人間性なども引き出せるように聞き出していきたいと思っています。

どんな方に受講をおススメしたいですか?

米原:お寺や神社は生きた美術館とも言われますが、金箔押しのことを知ればお寺や神社に行った時もこれまでと見方が変わってきますし、着物のことを知れば、街で着物姿の方を見る目が変わると思います。
お寺が好きな人、着物が好きな人、漆器や器が好きな人、伝統産業に触れてみたい方、日本文化に関心がある方など。
一回単位でも参加できるので、京都観光に来られたついでなど、お気軽にご参加いただければと思います。 一部のワークショップでは作ったものをお持ち帰りいただける講座もありますのでお土産にも良いのではないでしょうか。
例えばお昼間に金閣寺を見に行って、夕方から金箔の講座に参加して帰る、なんていうこともとても面白いと思いますよ。

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